お知らせ
今年の夏は電車通勤者の給与計算に要注意
今年3月、首都圏の鉄道各社を中心として「運賃の一斉値上げ」をした事を覚えている人は多いと思います。が、この値上げが毎月お給料から控除される「社会保険料」にも大きな影響を与えるのはご存じでしょうか??
◆社会保険料の随時改定とは
従業員の給与額が、昇給や降給により固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、定時決定(算定とも呼びます)を待たずに標準報酬月額を改定することになります。これを随時改定(月額変更とも呼びます)といいます。
随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。
(1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。(※1)
(2)変動月からの3カ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。(※2)
(3)3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。(※3)
上記(1)~(3)すべての要件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目(例:4月に支払われる給与に変動があった場合、7月)の標準報酬月額から改定されます。
(※1)固定的賃金とは、支給額や支給率が決まっているものをいいますが、その変動には、次のような場合が考えられます。
•昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
•給与体系の変更(日給から月給への変更等)
•日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
•請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
•住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更
電車通勤者の方には通勤手当として定期代相当額が支払われる事が多いですが、この通勤手当額の変更も実は「固定的な賃金の変動」として取り扱われるのです。
◆通勤手当の小幅な値上げでも…
今年の値上げにより、例えばJR山手線内 均一定期券の値段は14,490円→14,970円に変更となりました。冷静に見れば値上げ額は1カ月で480円ですので、値上げ幅としてはあまり大きくないかもしれません。
また給与計算の観点から見ても、交通機関を利用する通勤手当は所得税が非課税になるケースが大半ですので、毎月の通勤手当額を変更しても給与計算にはまだ影響していないのではないでしょうか。
・・・・・まだ?
実は通勤手当の値上げ幅がポイントなのではなく、通勤手当額の変更が随時改定の「トリガー」になる事の方がポイントなのです。
たとえば当月末〆翌月25日払いの会社では、4月25日支給の給与から通勤手当額が変更されているかもしれません。この場合随時改定のトリガーは4月から引かれるため、4月25日・5月25日・6月25日に支給される給与総額を平均した月額が随時改定の判定材料となります。
もし、年度末である3月にたくさん残業をしすると4月25日に支給される給与が通常より多くなります。これにより随時改定の要件の1つである【変動月からの3カ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。】を満たした場合、もしかすると夏場に支給される給与で社会保険料の控除額がグッと増えている可能性があります。
※もちろん社会保険料の控除額が増えると将来貰える年金額が増えたり、傷病手当金や出産手当金の支給額が増える事もあるのでデメリットばかりではありません。
また随時改定は定時決定より優先されますので(7月8月9月の随時改定の場合)、普段は秋頃に変更すればOKだった社会保険料が、夏場に変更する必要性が出てきてしまい、給与計算を行われている事務の方は社会保険料がどのタイミングから変更となるかを特に注意しなければなりません。
随時改定の要件を満たすかどうか、また月の途中で通勤手当額が変わった場合の随時改定はどうすれば良いか、その他諸々を考えだすと意外に奥が深いのが給与計算実務です。
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