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お知らせ

求人票や求人サイトに公開した賃金額等の労働条件を採用者の能力に合わせて変更することはできるか。

採用活動を行う際に、求職者との面接等の結果、採用は行いたいが求人票等で公開していた労働条件、特に賃金額に関して減額等変更が可能なのかについてご説明いたします。

 

◆求人票等への記載と労働契約の内容について

 

①求人票等への記載内容の解釈
求人票等に記載する内容は、一般的に広く不特定多数の求職者に向けて【労働条件の概要を示すもの】であるため、その内容を以て特定の求職者の雇用契約の意思表示とみることはできないものと判断されます。(日新火災海上保険事件 平成12年4月19日 東京高裁判決)

 

ただし、「求人票の真実性、重要性、公共性等からして、求職者は当然求人票記載の労働条件が雇用契約になるものと考えるし、通常の求人者も求人票に記載した労働条件が雇用契約になることを前提としていることに鑑みるならば、求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなど特段の事情がない限り、雇用契約の内容になるものと解するのが相当」とする考えも存在します。(千代田工業事件 大阪高裁 平成2年3月8日判決)

 

②労働条件の明示に関する法改正について
職業安定法の平成30年1月1日の改正により「当初明示した労働条件が変更される場合、変更内容について明示しなければならない」というルールで追加され、求職者の面接等の過程で労働条件に変更があった場合、速やかに求職者に知らせるよう配慮が必要になりました。

 

◆求人票等で公開していた労働条件の変更の可否

 

前述の内容を考慮すると採用を決定していく過程の中で、面接等の試験の中で把握した情報に基づいて賃金等の労働条件を変更することについては【労働契約の締結をしていない状況】であれば、労働者の同意が特段なくても可能であるといえる。もちろん、求人票等で明示していた条件より減額して提示した場合、求職者が同意せず労働契約は成立しない可能性は高くなるのはいうまでもありません。

 

また

 

①既に採用を決定した後に労働契約を結ぶ段階になってから求人票等の内容から減額した労働条件を提示する場合

②求人票等と同一の内容の雇用契約書もしくは労働条件通知書を渡していた場合

には注意が必要です。

 

上記の状況のまま、就労を開始してしまっている場合、基本的には求人票等の内容で労働契約が成立したとされるため、不利益な労働条件に変更する場合は【原則、労働者の同意が必要】となります。

 

まとめとして、労働条件を変更することは可能であるが、提示するタイミングを間違わないように、契約内容に齟齬を生じさせないように、採用を決定する最終面談時などに確実な形で明示するようにしていっていただきたいと考えます。