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不採用の理由を不採用者に告知する義務はあるの?

採用活動を行っている際に、不採用の応募者から「不採用の理由を教えてほしい」と連絡が来たことはありませんか?

その場合、応募者へ不採用の理由を伝えなければならないのでしょうか?

 

結論から言いますと、不採用の理由を不採用者に告知する義務はないと解されます。
その理由について、下記にて解説いたします。

 

1.採用の自由と不採用の理由の告知義務
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使用者は採用の自由を有しており、法令上の制限に抵触しない限り、採否の基準を自由に決定することができます。また、不採用とする場合に、その理由を不採用者に対して告知すべきことを定めた法令はなく、告知するか否かについても、原則として使用者の裁量判断に委ねられます。

 

なお、慶応大学附属病院事件(東京高裁 昭50.12.22判決)は、人員の採否に関する企業等の自由には、「採否決定の理由を明示、公開しないことの自由をも含む」としています。

 

もっとも「採用の基準」は、それ自体が企業にとって重要な営業上の情報であることも多く、また、その開示が将来における採用に影響を及ぼすおそれも考えられることから、不採用理由を告知するかどうかに関し、使用者の裁量は広いものと考えられます。

 

2.個人情報保護法による保有個人データの開示義務
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個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に対し、本人からの保有個人データの開示請求に遅滞なく応じることを求めています。(法第28条1項、2項本文)。

 

ただし、「当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」には、その全部または一部を開示しないことを許容しています(同第2項ただし書き、同項2号)。

 

これに関し、厚生労働省が平成24年5月に公表した「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン:事例集」では、保有個人データの開示に関し、「非開示とすることができる事項の例」の一つとして「選考に関する個々人の情報」が挙げられています。

 

以上のことから、不採用の理由は「選考に関する個々人の情報」に該当するものであり、個人情報保護法上も不採用の理由について開示すべき義務はないと解されます。