
カスハラ条例への関心が高まり、企業には顧客対応の見直しが求められています。
ただし、条例があるからといって、すべての苦情や要望をカスハラとして扱ってよいわけではありません。
商品やサービスへの正当な意見には丁寧に向き合いながら、従業員の人格や安全を傷つける行為には組織として対応する必要があります。
現場任せの対応が続くと、担当者が一人で抱え込み、離職やメンタル不調につながるおそれもあります。
今回は、カスハラ条例をきっかけに、企業が確認したい対応の基本を整理します。
カスハラ条例で押さえたい基本
条例は地域ごとに内容が異なる
カスハラに関する条例は、自治体ごとに対象や表現、事業者に求める対応が異なります。
すでに施行されている条例では、顧客等から働く人に対して行われる著しい迷惑行為を防ぐことが重視されています。
そのため、全国一律の対応だけでなく、自社の拠点や店舗がある地域のルールを確認することが大切です。
条例の内容を把握しておくと、社内マニュアルや研修の前提をそろえやすくなります。
正当なクレームとの区別が必要
カスハラ対応で特に重要なのは、正当なクレームと不当な要求を分けて考えることです。
商品不良、説明不足、対応ミスなどに対する指摘は、企業が改善に生かすべき声です。
一方で、長時間の拘束、人格を否定する発言、土下座の要求、過度な金銭補償の要求などは、従業員を守る観点から対応を変える必要があります。
線引きが曖昧なままだと、現場は「どこまで我慢すべきか」を判断できません。
目的は従業員と顧客対応の両立
カスハラ条例は、顧客対応を拒むためのものではありません。
働く人の安全と尊厳を守りながら、適切なサービス提供を続けるための考え方です。
企業は、顧客の意見を受け止める姿勢と、許容できない行為には毅然と対応する姿勢の両方を示す必要があります。
この両立を社内で共有できると、現場の迷いを減らし、対応品質のばらつきも抑えられます。

企業が整えたい初期対応
判断基準を社内で共有する
まず必要なのは、どのような言動をカスハラとして扱うのかを社内で共有することです。
暴言や脅迫だけでなく、長時間の電話、同じ内容の執拗な連絡、業務上必要な範囲を超える謝罪要求なども想定しておくと実務に役立ちます。
判断基準は細かすぎると使いにくく、抽象的すぎると現場判断に戻ってしまいます。
代表的な例を挙げながら、管理者へ相談する目安を決めておくことが重要です。
一人で抱え込ませない
カスハラ対応では、担当者が一人で対応を続けない仕組みが欠かせません。
一定時間を超えた対応、威圧的な言動、録音や訪問を伴う要求などがあった場合は、上司や専門部署に引き継ぐ流れを決めておきます。
「自分の対応が悪いのではないか」と感じる従業員もいるため、会社として守る姿勢を明確に伝えることも大切です。
相談しやすい空気があるほど、問題の早期把握につながります。
記録と共有を習慣にする
対応の内容は、日時、相手の発言、要求内容、担当者の対応、引き継ぎ先などを記録します。
感情的な評価ではなく、事実を残すことがポイントです。
記録があれば、社内で対応方針を検討しやすくなり、同じ相手から繰り返し要求があった場合にも一貫した対応を取りやすくなります。
また、従業員のケアや再発防止策を考える材料にもなります。

義務化を見据えた社内整備
方針を明文化して周知する
2026年10月1日から、国の制度でもカスハラ対策が事業主の義務となります。
企業は、カスハラを許さない方針や、顧客対応で大切にする姿勢を明文化しておくとよいでしょう。
社内向けには相談先や報告手順を示し、必要に応じて社外向けにも従業員を守る姿勢を伝えます。
方針が明確になることで、従業員は迷ったときに会社の基準に沿って行動しやすくなります。
マニュアルと研修を整える
対応マニュアルには、初期対応、エスカレーション、対応打ち切りの目安、警察や弁護士など外部機関へ相談する場合の流れを整理します。
マニュアルを作るだけでなく、管理職や現場担当者が実際に使えるよう研修も必要です。
ロールプレイや事例検討を取り入れると、言葉の選び方や引き継ぎのタイミングを確認できます。
定期的に見直すことで、現場の実情に合った運用に近づきます。
相談窓口と労務管理をつなげる
カスハラは顧客対応の問題であると同時に、職場の安全配慮や労務管理にも関わります。
被害を受けた従業員への面談、休養が必要な場合の対応、配置や業務分担の調整なども検討対象です。
相談窓口を設けるだけでなく、相談後にどのような支援を受けられるのかを示しておくと、従業員は声を上げやすくなります。
人事労務の視点を入れることで、制度と現場対応を結び付けやすくなります。
まとめ
カスハラ条例への対応では、条例の内容を確認し、正当なクレームと不当な要求を分けて考えることが出発点です。
そのうえで、判断基準、相談ルート、記録方法、マニュアル、研修を整えると、現場任せの対応から抜け出しやすくなります。
国の義務化も見据えると、今のうちから社内の方針や相談体制を見直しておくことが大切です。
従業員を守る仕組みは、安心して顧客対応を続けるための土台になります。
みらいパートナーズでは、カスハラ対策の方針整理、相談窓口、社内規程や対応フローの整備などを支援しています。
社内だけで判断しにくい場合は、早めにご相談ください。