カスハラ対策を始める際、社内規程に何を書けばよいか迷う企業は少なくありません。
顧客へ毅然と対応するという方針だけでは、現場の従業員がどの段階で上司を呼び、相談後に会社が何をするのか分からない場合があります。
一方で、想定される言動を細かく列挙し過ぎると、記載のない事案に対応しにくくなります。
社内規程には基本方針と役割を定め、具体的な行動は対応フローなどで補うことが大切です。
今回は、カスハラに関する社内規程の項目と運用方法を解説します。
カスハラ対策を社内規程に定める目的
会社の方針と判断の軸を共有する
カスハラが疑われる場面では、顧客の要求内容、言動の手段や態様、従業員への影響を踏まえて判断します。
現場の担当者ごとに対応が異なると、一人で無理に応対を続けたり、正当な申入れまで拒んだりする可能性があります。
会社が従業員を保護し、社会通念上許容される範囲を超えた言動には組織として対応する方針を明確にしましょう。
同時に、商品やサービスの問題と顧客の言動を分けて確認し、正当な意見には適切に対応する姿勢も示します。
相談から対応までの責任を明確にする
相談窓口を設けても、その後の事実確認や従業員への配慮を誰が担うか決まっていなければ対応が止まります。
社内規程で、相談を受ける担当者、現場責任者、人事労務部門、法務部門、経営層などの役割を整理します。
特に、暴力や脅迫など緊急性の高い事案では、通常の相談手順を待たずに安全確保を優先する必要があります。
現場で判断できる範囲と上位者の承認が必要な対応を分け、連絡先と代理担当者も定めておくことが重要です。

カスハラの社内規程には何を書く?
対象となる言動と適用範囲
規程では、顧客、取引先、施設利用者など、事業に関係する者の言動を対象とし、従業員が従事する業務の性質その他の事情に照らして、その言動の内容または手段・態様が社会通念上許容される範囲を超え、従業員の就業環境を害するものを扱うことを示します。
暴言、脅迫、長時間の拘束、過度な謝罪要求などは例として記載できます。
ただし、例だけで機械的に判断せず、業種、場所、継続時間、回数、従業員への影響を総合的に確認する旨も定めましょう。
自社の従業員が他社の従業員へ行う言動にも注意を促すことが必要です。
報告と初期対応の手順
従業員がどのような場合に上司へ報告し、誰が応対を交代するかを定めます。
一人での対応を続けないこと、必要に応じて録音・録画すること、説明後も要求が繰り返される場合の終了方法などが主な項目です。
暴行、傷害、脅迫など犯罪に該当し得る言動については、警察への通報も選択肢に含めます。
録音や顧客情報を扱う場合は、個人情報を適切に管理する必要があります。
連絡基準は、電話、店舗、訪問先などの場面別に補足すると運用しやすくなります。
相談者の保護と事後対応
相談窓口と利用方法を示し、カスハラが実際に起きた場合だけでなく、発生のおそれがある場合や該当するか判断しにくい場合も相談できることを周知します。
相談後は、事実関係を迅速かつ正確に確認し、必要に応じて周囲の従業員や行為者からも事情を聞きます。
被害が確認された場合の対応者変更、行為者との分離、メンタルヘルス不調への相談対応なども定めます。
また、相談者のプライバシーを保護し、相談したことを理由に不利益な取扱いを行わないことを明記しましょう。

規程を現場で機能させる方法
短い対応フローを併用する
緊張した現場で長い規程を読み返すことは困難です。
規程には基本方針と責任を置き、初期対応は短いフローやチェックリストで示します。
例えば、相手の要求を確認する、危険があれば距離を取る、上司へ報告する、記録を残すという順番を明確にします。
顧客対応を終了する条件や警察へ連絡する場面は、現場だけに判断を負わせず、管理職や本部と連携できる形にします。
夜間や休日に責任者が不在となる職場では、代替の連絡先も必要です。
役割別の研修で周知する
従業員にはカスハラの考え方、相談先、初期対応を説明し、管理職には安全確保、事実確認、従業員への配慮を伝えます。
相談窓口担当者には、話を遮らずに聞く方法、記録、プライバシーの扱い、関係部門への引き継ぎを共有します。
規程の条文を読むだけでなく、自社で起こりやすい事例を使って役割を確認すると、判断の違いに気づきやすくなります。
研修後に出た疑問は、規程や対応フローの補足へ反映しましょう。
事案と法改正に合わせて見直す
2026年10月1日から、カスハラ防止のために必要な雇用管理上の措置を講じることが事業主の義務となります。
ただし、法律が特定の名称や形式の社内規程だけを求めているわけではありません。
方針、対処内容、相談体制、事後対応、悪質な行為への対処、プライバシー保護などが実際に機能するよう、規程、マニュアル、研修を組み合わせて整えます。
発生した事案や現場の声を確認し、連絡基準や役割に不足があれば定期的に見直すことが大切です。
まとめ
カスハラの社内規程には、会社の方針、対象となる言動、報告と初期対応、相談体制、事実確認、従業員保護を定めます。
具体的な行動は対応フローと研修で補い、事案や法改正に合わせて見直すことで、現場で使える仕組みにしましょう。
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