勤怠管理システムを導入するときは、打刻や集計の設定だけでなく、就業規則との整合を確認する必要があります。
システム上の所定労働時間や休憩時間が実際のルールと異なれば、残業時間や給与計算にずれが生じかねません。
一方、現在の働き方に就業規則が追いついていないケースもあります。
どちらか一方に無理に合わせるのではなく、規程、実際の運用、システム設定の三つを照合することが大切です。
勤怠管理システムと就業規則を合わせる理由
システムの初期設定が自社ルールとは限らない
勤怠管理システムには、一般的な勤務時間や休憩時間が初期値として用意されている場合があります。
しかし、始業・終業時刻、休日、交替制勤務の切り替え方などは企業によって異なります。
初期設定のまま使うと、遅刻・早退の判定や所定外労働の集計が就業規則と食い違うことがあります。
雇用区分や勤務形態ごとに適用するルールを整理し、正社員の設定を短時間勤務者やシフト勤務者へそのまま流用しないよう注意しましょう。
規程と実際の働き方に差があることもある
就業規則には固定の始業時刻が書かれている一方、現場では時差出勤を常態的に認めているなど、文書と運用が一致していない場合があります。
システム導入時に現場へ聞き取りをすると、申請なしの早出、休憩の取り方、直行直帰時の報告など、これまで見えにくかった慣行が判明することもあります。
システムだけを実態へ合わせると不整合が残るため、適法性を確認したうえで運用を改めるのか、就業規則を変更するのかを検討します。

どの項目を照合すればよい?
始業・終業、休憩、休日の設定
まず確認したいのは、始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務など、労働時間の基本となる項目です。
勤務パターン、日付をまたぐ夜勤、半日休暇、休日出勤後の振替などを、システムがどう判定するか確認します。
打刻時刻を一定の単位で一律に切り捨てる設定や、打刻がない時間を自動的に休憩として扱う設定は、実際の労働時間を正しく反映しないおそれがあります。
規程上の時間だけでなく、客観的な記録を基礎に実労働時間を把握できる設計になっているかも点検が必要です。
残業や休暇の申請・承認ルール
就業規則や関連規程に事前申請の定めがあるなら、システムの申請経路と承認者を対応させます。
ただし、残業申請がないことだけを理由に、実際に指示して行わせた労働時間を記録から外すことは適切ではありません。
打刻と申請に差がある場合の確認方法、承認が遅れた場合の処理、管理者が不在の際の代理承認などを決めておきます。
年次有給休暇や特別休暇も、取得単位、残日数、申請期限、付与対象者が規程や労使協定と一致しているか確認しましょう。
割増賃金につながる集計区分
勤怠データは給与計算の基礎になるため、法定内残業、時間外労働、休日労働、深夜労働などの区分を確認します。
システム上の「残業」という表示が、就業規則や賃金規程における割増賃金の計算区分と同じ意味とは限りません。
固定残業代を採用している場合も、実際の時間外労働等を把握し、対象時間を超えた分を確認できる設定が必要です。
締め日や端数処理も給与計算へ影響するため、勤怠担当者だけでなく給与担当者と一緒に照合します。

整合を取りながら導入する進め方
雇用区分と勤務パターンを棚卸しする
最初に、就業規則、賃金規程、育児・介護休業規程、労使協定、申請書式などを集めます。
次に、正社員、パートタイマー、フレックスタイム制、変形労働時間制、テレワークなど、対象者と勤務パターンを一覧にします。
例外的な働き方も含め、どの規程をどの従業員へ適用するかを明確にすると、設定漏れを防ぎやすくなります。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と変更について所轄の労働基準監督署長への届出が必要である点も押さえておきましょう。
実際の勤務例でテストする
設定後は、通常勤務だけでなく、遅刻、早退、残業、休日出勤、休暇、夜勤などの勤務例を使ってテストします。
打刻から申請、承認、月次締め、給与計算への連携まで通しで確認し、期待する結果と差があれば原因を切り分けます。
規程の文言が曖昧で設定を決められない場合は、先に社内ルールを明確にする必要があります。
本稼働前に一部の部署で試行し、従業員と管理者の双方から操作上の疑問を集める方法も有効です。
変更内容を周知して運用を点検する
就業規則を変更する場合は、労働者側の意見聴取や届出、従業員への周知など、必要な手続きを確認します。
システムの操作方法だけでなく、申請期限や承認の考え方など、運用ルールも合わせて説明しましょう。
稼働後は、未打刻、長時間労働、申請と打刻の差、締め後の修正件数などを定期的に確認します。
制度変更や法改正、勤務形態の追加があったときに、就業規則とシステム設定を同じタイミングで見直す担当者も決めておくと安心です。
まとめ
勤怠管理システムを適切に運用するには、就業規則、実際の働き方、システム設定を照合することが欠かせません。
労働時間や休暇、申請・承認、給与計算につながる区分を整理し、実際の勤務例で検証することで、集計のずれや運用上の混乱を抑えられます。
社会保険労務士法人みらいパートナーズでは、社会保険労務士と社内SEが連携し、勤怠管理をはじめとする人事労務システムの選定、設定、導入、運用を支援しています。
特定の製品に偏らず、就業規則や給与計算などの労務管理とシステムの両面から検討できます。
勤怠管理システムと社内ルールの整合にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。