
顧客から厳しい言葉を受けたとき、それが正当な苦情なのか、カスハラに当たり得る言動なのか、現場ではすぐに判断できないことがあります。
特に、サービスの不備や待ち時間への不満が背景にある場合は、相手の要求を受け止めるべきか、対応を切り替えるべきか迷いやすいものです。
暴言の言葉だけに注目すると、正当な指摘まで排除してしまったり、反対に従業員が無理に対応を続けたりするおそれがあります。
大切なのは、要求内容の妥当性と、その伝え方や継続の仕方を分けて確認することです。
今回は、カスハラに当たり得る暴言の例と、現場での線引き、対応の進め方を整理します。
どのような暴言がカスハラに当たり得る?
人格を否定する言動
従業員の能力や容姿、人格を否定する発言は、業務上必要な苦情の伝え方とはいえません。
「無能だ」「辞めさせる」など、相手を傷つけたり、過度に威圧したりする言葉が繰り返される場合は、従業員の就業環境に影響するおそれがあります。
顧客が不満を感じている理由を確認することは必要ですが、侮辱的な言動まで受け入れる必要はありません。
対応者は言い返すのではなく、事実確認に必要な内容へ話題を戻し、改善が見込めない場合は上席者へ引き継ぎます。
脅しや危害を示唆する言動
「店に行く」「家を調べる」といった脅しや、従業員に危害を加えることを示唆する発言があった場合は、安全確保を優先します。
その場で1人で対応を続けず、周囲へ応援を求め、責任者へ報告することが重要です。
状況によっては、相手との距離を取り、警察への相談や通報を検討する必要もあります。
発言の内容、日時、場所、対応した人、周囲にいた人を記録し、後から組織として確認できるようにしましょう。
長時間の拘束や執拗な要求
同じ説明をしても終わらない電話、営業時間を超えて続く要求、何度も繰り返される呼び出しなども、態様によっては問題になります。
要求の内容に一部妥当な点があっても、長時間拘束や繰り返しの要求によって通常業務が妨げられ、従業員が疲弊する場合があります。
あらかじめ対応時間の目安や、責任者へ交代する基準を決めておくと、担当者が無理に対応を続けずに済みます。
対応を終了する際の伝え方も、感情的にならないよう社内で共有しておくことが大切です。

正当な苦情とどう見分ける?
要求内容に妥当性があるか
商品やサービスに不備があった、説明が十分でなかった、約束した対応が行われなかったといった場合、顧客から改善や説明を求めることには理由があります。
まずは、何に不満を感じているのか、事実関係を確認し、会社として対応できる範囲を説明します。
事実と異なる内容、実現できない要求、根拠のない金銭の請求などは、要求の妥当性を慎重に確認する必要があります。
対応者の印象だけで決めず、契約内容、案内記録、関係者の認識を踏まえて判断しましょう。
伝え方や態様が相当か
要求内容に妥当な部分があっても、暴言、侮辱、脅し、差別的な発言、土下座の要求など、手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えることがあります。
この場合は、苦情の内容を確認することと、従業員を不当な言動から守ることを分けて考えます。
例えば、必要な説明や返金手続きは進めつつ、暴言が続く場合は上席者へ交代し、対応方法を変更することが考えられます。
対応を続ける条件と、組織対応へ切り替える条件をマニュアルにしておくと判断がぶれにくくなります。
複数人で判断する
カスハラに当たるかどうかは、1人の担当者の受け止めだけで決めないことが重要です。
現場の責任者や相談窓口が記録を確認し、発言内容、要求の経緯、対応時間、従業員への影響を踏まえて判断します。
複数人で対応することは、判断の偏りを防ぐだけでなく、対応者の心理的な負担を減らすことにもつながります。
判断に迷う事案は、早い段階で人事や本部などへ共有する仕組みを作りましょう。

暴言を受けた現場はどう対応する?
その場で抱え込まない
暴言を受けたときは、相手を説得しようとして1人で長く対応し続けないことが大切です。
安全に不安がある場合は、その場から離れる、周囲の従業員へ知らせる、上席者へ交代するなどの対応を取ります。
電話対応であれば、必要な説明をしたうえで、責任者から改めて連絡する旨を伝える方法もあります。
事業所ごとに、誰へ応援を求めるか、緊急時にどう連絡するかを事前に決めておきましょう。
事実を記録して共有する
記録には、相手の発言をできるだけ具体的に残し、対応者の感想だけで終わらせないことが重要です。
日時、場所、連絡方法、要求内容、相手の言動、対応した内容、同席者の有無を整理します。
録音や防犯カメラの映像を扱う場合は、社内のルールに従い、個人情報の取扱いにも注意が必要です。
記録を共有することで、次に同じ相手から連絡があった場合にも、組織として一貫した対応を取りやすくなります。
対応後の従業員を支える
暴言や脅しを受けた従業員は、対応が終わった後も不安や緊張が続くことがあります。
上司や相談窓口は、対応者を責めるのではなく、体調や安全に問題がないかを確認します。
必要に応じて担当を交代し、休憩を取れるようにすることも大切です。
個別の対応を振り返り、同じ負担が繰り返されないようにルールや人員配置を見直しましょう。
まとめ
カスハラに当たり得る暴言には、人格否定、脅し、長時間の拘束や執拗な要求などがあります。
ただし、苦情のすべてがカスハラではないため、要求内容の妥当性と、伝え方や態様を分けて確認することが重要です。
現場では1人で抱え込まず、応援を求め、記録を残して組織で判断できるようにしましょう。
対応後の従業員への配慮も含めて体制を整えることで、顧客対応と職場環境の両立を図りやすくなります。
みらいパートナーズでは、カスハラに関する相談体制、対応基準、現場向けマニュアルの整理を支援しています。
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