カスハラで裁判になる前に企業が知っておきたい責任と対策

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顧客からの暴言や過度な要求に従業員が悩んでいても、「お客様への対応だから仕方がない」と現場に任せてしまっていないでしょうか。
カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラは、行為をした顧客だけの問題ではありません。
被害を受けた従業員への企業の対応が不十分だった場合、裁判で企業側の責任が争われることもあります。
そこで、今回はカスハラをめぐる裁判でどのような点が問題になるのかを整理し、企業として準備しておきたい相談体制や社内ルールについて社会保険労務士の視点から解説します。

カスハラ裁判で企業はどこまで責任を問われる?

顧客本人の責任と企業側の責任は分けて考える

カスハラをめぐる裁判を考えるときは、行為をした顧客等の責任と、従業員を雇用する企業の責任を分けて整理する必要があります。
暴行や脅迫、名誉を傷つける言動などがあれば、顧客等が不法行為による損害賠償責任を負ったり、行為の内容によっては刑事責任が問題になったりする可能性があります。
一方、企業には雇用する従業員の生命や身体などの安全に配慮する義務があるため、カスハラを把握しながら被害を放置した場合などには、企業側の安全配慮義務違反が争点となることがあります。
そのため、「問題を起こしたのは顧客だから企業には責任がない」と単純に切り分けることはできません。

被害従業員への安全配慮義務が企業側の争点になる

労働契約法第5条では、使用者は労働契約に伴い、労働者が生命や身体等の安全を確保しながら働けるよう必要な配慮をするものとされています。
カスハラについても、企業が被害の発生や従業員の心身の状態を把握した後、どのような対応を取ったのかが重要です。
実際に、保護者対応によって強い心理的負荷を受けた保育士に関する裁判例では、カウンセリングや業務負担軽減など一定の対応が行われていたものの、十分な措置ではなかったとして安全配慮義務違反が認められています。
一度対応したという事実だけでなく、従業員の状態や問題の継続状況に応じて対応が機能しているかまで確認することが重要です。

裁判例では事前ルールや相談体制など実際の対策状況も判断材料になる

企業側の安全配慮義務違反が否定された裁判例もあります。
コールセンターで従業員がわいせつ発言や暴言を受けたNHKサービスセンター事件では、問題のある電話を上司へ転送する手順や一定の場合に電話を切断できるルールなどが定められ、実際に運用されていました。
さらに、メンタルヘルス相談やカウンセリングなどの体制も含めて総合的に判断され、使用者の安全配慮義務違反は認められませんでした。
裁判になったときだけ説明できる対策を用意するのではなく、平時から「誰が、どの段階で、どのように対応するのか」を決め、現場で使える状態にしておくことが大切です。

悩むビジネスマン

よくある質問

2026年10月1日のカスハラ対策義務化で企業対応はどう変わる?

2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法に基づくカスタマーハラスメント対策が事業主の義務となります。
事業主には、カスハラに毅然と対応して労働者を保護する方針の明確化や周知、あらかじめ定めた対処内容の周知、相談体制の整備、発生後の事実確認や被害者への配慮、再発防止などが求められます。
また、特に悪質と考えられるカスハラへの対処方針を定め、実際に対応できる体制を整えることも必要です。
施行直前に形式だけを整えるのではなく、自社の顧客対応や業務の特徴に合わせて実際に運用できる内容になっているかを確認しておきましょう。

カスハラを受けたときはどのような記録を残しておくべき?

カスハラが発生した際は、発生日時や場所、相手の言動、要求内容、従業員が行った対応、周囲の状況などをできるだけ具体的に整理しておくことが重要です。
メールやメッセージなど客観的に確認できる資料がある場合は、社内ルールに沿って適切に管理します。
記録は責任追及のためだけに残すものではなく、社内で事実関係を確認し、被害を受けた従業員への対応や今後の方針を検討するための基礎資料にもなります。

カスハラ対応を社内規程や対応フローへどう落とし込む?

実務では、どこからを通常の苦情対応とし、どのような行為をカスハラとして扱うのかを整理することが出発点です。
そのうえで、現場担当者だけでは対応を続けられない場合の上司への報告、担当者の交代、本社への情報共有、必要に応じた警察への通報など、段階ごとの対応方法を決めておきます。
私たちは社会保険労務士として、法令だけを見るのではなく、企業の実際の顧客対応や組織体制を確認しながら、社内規程や対応フローの整備を支援しています。
ルールを作成すること自体を目的にせず、現場担当者が迷ったときに判断できる運用へ落とし込むことが重要です。

外部相談窓口を設けることにはどのようなメリットがある?

従業員がカスハラを受けても、社内の上司や人事担当者には相談しにくく、問題が表面化しないことがあります。
外部相談窓口という選択肢を設けることで、相談経路を増やし、社内担当者だけに相談対応の負担が集中することを避けやすくなります。
私たちは、相談者が匿名のままやり取りできる外部のハラスメント相談窓口を提供しており、寄せられた相談内容を企業担当者へ報告する仕組みを整えています。
外部窓口だけですべての紛争を防げるわけではないため、社内規程や対応フロー、従業員保護の方法と組み合わせ、相談を受けた後に企業が適切に動ける体制まで整えることが大切です。

人差し指を立てるビジネスウーマン

まとめ

カスハラをめぐる裁判では、顧客等の行為だけでなく、被害を受けた従業員に対して企業がどのような安全配慮を行っていたのかが問題になる場合があります。
2026年10月1日からカスハラ対策が事業主の義務となることも踏まえ、相談窓口、社内規程、対応フロー、発生後の従業員保護を個別に用意するのではなく、一連の仕組みとして整備することが重要です。
私たちは社会保険労務士として、企業の実態に合わせた規程や運用の整理、外部の匿名型ハラスメント相談窓口などを通じ、カスハラ対応を実務で機能させるための体制づくりを支援しています。
現在の対応が法改正後にも適した内容になっているか不安がある場合や、現場任せになっている対応を整理したい場合は、早めにご相談ください。

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