顧客から強い言動を受けた従業員から相談があったとき、会社には速やかな対応が求められます。
ただし、相談内容を聞いただけでカスハラと断定したり、反対に証拠が少ないことを理由に取り合わなかったりすると、適切な判断が難しくなります。
事実確認では、従業員の安全とプライバシーに配慮しながら、言動の内容や要求、発生時の状況を客観的に整理することが大切です。
そこで今回は、カスハラが疑われる事案で確認したい事項、聞き取りと証拠確認の進め方、確認後の対応を解説します。
カスハラの事実確認で押さえる基本
被害を受けた従業員に判断させない
カスハラに当たるかどうかを、言動を受けた従業員本人だけに判断させてはいけません。
被害直後は動揺していることがあり、顧客との関係を気にして申告をためらう場合もあります。
相談窓口の担当者や管理職、必要に応じて関係部門が情報を整理し、組織として判断する体制を整えます。
担当者には、相談者の話を否定せずに聞くことと、確認できた事実と本人の受け止めを分けて記録することの両方が求められます。
要求内容と手段を分けて考える
顧客の申出に商品やサービスの問題が含まれていても、その伝え方が社会通念上許容されるとは限りません。
一方で、厳しい意見であることだけを理由に、すべてをカスハラとして扱うことも適切ではありません。
何を求めているのか、その要求に根拠があるのかに加え、暴言、威圧、拘束、執拗な繰り返しなどの手段や態様を分けて確認します。
会社側の説明不足や対応上の問題も含めて検証することで、正当な申出への対応と従業員を守る対応を整理しやすくなります。
緊急時は安全確保を優先する
暴力や脅迫がある、行為者が退去しない、従業員の心身に強い負担が生じているといった場面では、詳細な聞き取りより先に安全を確保します。
上司や管理職が対応を交代し、従業員と行為者を引き離すほか、状況に応じて警察や警備担当者などへの連絡を検討します。
現場の担当者に対応継続の可否を委ねるのではなく、どの段階で応援を呼び、サービスの停止などを誰が判断するかをあらかじめ決めておくことが重要です。

事実確認はどの順番で進める?
申告者から時系列で聞き取る
最初の聞き取りでは、発生日時と場所、対応した人、顧客の発言や行動、要求された内容、会社側の応答を時系列で確認します。
「怖かった」などの受け止めも重要ですが、発言はできる限り実際の表現で記録すると、後の判断に役立ちます。
誘導的な質問や責任を追及するような聞き方は避け、途中で休憩を設けるなど本人の負担にも配慮します。
また、相談内容を誰と共有するのか、秘密をどのように扱うのかを説明し、相談したことを理由に不利益な取扱いをしない方針も伝えます。
客観資料と周囲の証言を確認する
相談者の説明を記録した後は、防犯カメラ、通話録音、メール、チャット、注文履歴、対応記録など、事案に関係する資料の有無を確認します。
現場に同席した従業員がいれば、可能な限り個別に聞き取り、他の人の説明に影響されないようにします。
資料が残っていないことだけで相談内容が事実ではないと決めつけず、複数の情報が一致する点と食い違う点を整理しましょう。
録音や映像、顧客情報を扱う際は、閲覧できる担当者と保管方法を定め、必要以上に共有しないことが大切です。
顧客等の主張と求めを確認する
安全上の問題がなく、必要かつ可能な場合は、顧客等からも事実関係を聴取し、主張や要求を確認します。
その際、その場でカスハラかどうかの結論や補償内容を約束せず、確認したうえで回答する旨を伝えます。
行為者が取引先の従業員などであれば、相手方の事業主へ事実確認の協力を求めることも選択肢です。
ただし、相談者の氏名や健康情報まで安易に伝えず、目的に必要な情報に限定します。

確認結果をどのように対応へつなげる?
複数の視点で判断と対応を決める
集めた情報は、発生した言動、要求内容、手段や態様、継続時間、繰り返しの有無、従業員への影響に分けて整理します。
判断が難しい事案ほど、現場担当者だけで結論を出さず、人事労務、法務、管理職など複数の視点を入れることが有効です。
会社側に商品やサービス上の問題が確認された場合は、それに応じた説明や是正を行います。
また、会社側に問題がある場合でも、要求の手段や態様が許容範囲を超えるときは、警告、対応者の変更、連絡方法の限定など、事前の方針に沿って組織的に対応します。
記録を再発防止と従業員保護に生かす
判断結果だけでなく、相談の受付から確認、対応決定までの経緯と理由を記録すると、同様の事案が起きたときの対応基準になります。
相談者には、共有できる範囲で確認結果と今後の対応を説明し、必要に応じて本人の意向に配慮しながら、勤務場所の変更や専門家への相談など心身への配慮を行います。
事案の振り返りでは、個人が特定されないようにしたうえで、連絡体制、対応フロー、記録様式、顧客への案内を見直します。
2026年10月1日からはカスハラ防止措置が事業主の義務となるため、事実確認を相談窓口だけの仕事にせず、方針や対応手順へ反映し、社内で周知することが重要です。
まとめ
カスハラの事実確認では、被害を受けた従業員に判断を委ねず、安全を確保したうえで、発言や要求、対応経緯を時系列で整理します。
客観資料や周囲の証言も確認し、要求内容と手段・態様を分けて複数の担当者で判断することが大切です。
確認後は従業員への配慮を続け、記録を対応基準や再発防止策の見直しに生かしましょう。
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